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犬の腎不全の原因や症状、診断や治療法を獣医師が徹底解説!
豊田市近隣のみなさん、こんにちは!
豊田市の森田動物病院です。
今回は犬の腎不全について、その原因や症状、診断方法、そして治療の流れまでを獣医師の視点からわかりやすく解説していきます。
腎不全は、初期の症状が分かりにくいため見逃されやすい病気の一つですが、早期発見・早期治療がとても重要です。
この記事を通じて、腎不全に対する理解を深めていただき、大切なわんちゃんの健康管理に役立てていただければと思います。
1.症状
腎不全とは、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなる状態です。
犬の腎不全は「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2つに大きく分けられ、それぞれで現れる症状や進行スピードが異なります。
主な症状:
・水を大量に飲む(多飲)
・尿の量が多い、または極端に少ない(多尿・乏尿)
・食欲の低下
・体重の減少
・元気がない、疲れやすい
・嘔吐や下痢
・口臭がアンモニア臭になる
・被毛のツヤが悪くなる
・貧血(慢性の場合)
・痙攣や意識障害(末期の場合)
これらの症状は他の病気と共通しているものも多く、初期段階では気づきにくいことが特徴です。
特に「多飲多尿」はよく見られる初期症状なので、注意深く観察してあげましょう。
2.原因
腎不全の原因は多岐にわたりますが、大きく「急性」と「慢性」に分けて原因を見ていきましょう。
急性腎不全の主な原因:
・中毒(例:ユリ、ブドウ、レーズン、薬物など)
・感染症(例:レプトスピラ感染症)
・腎臓への血流不足(脱水やショック状態)
・尿路閉塞(尿が出ない状態)
急性腎不全は短期間で急激に腎機能が低下する状態です。
原因によっては早期に適切な処置をすることで回復が見込めることもあります。
慢性腎不全の主な原因:
・加齢による腎臓の変性
・先天性の腎疾患
・長期的な高血圧や心疾患の影響
・慢性の尿路感染症
・結石や腫瘍による腎臓へのダメージ
慢性腎不全は時間をかけてゆっくりと腎機能が低下していくため、明確な原因が特定できないケースも少なくありません。
高齢犬では特に発症しやすく、定期的な健康診断での早期発見がカギとなります。
3.診断の流れ
腎不全が疑われる場合、以下のような検査を通して診断を進めます。
① 問診・身体検査
まずは、飼い主様から普段の生活状況や症状の経過などを詳しく伺います。
また、脱水の有無や口臭、体重、体温などもチェックします。
② 血液検査
腎不全の診断には血液検査が不可欠です。主に以下の項目を確認します。
・BUN(尿素窒素)
・Cre(クレアチニン)
・SDMA(対数型早期マーカー)
・リンやカリウムなどの電解質異常
これらの数値が高い場合、腎機能が低下している可能性が高いと判断します。
③ 尿検査
尿の濃さやタンパクの有無、比重、pHなどを確認します。
腎不全では尿の濃縮力が低下していることが多く、尿比重が低い傾向にあります。
④ 画像検査(超音波・レントゲン)
腎臓のサイズや構造、腫瘍や結石の有無などを調べます。
慢性腎不全では腎臓が萎縮していることが多く、画像検査で確認されます。
4.治療の流れ
腎不全の治療は、原因と進行度に応じて異なりますが、基本的には以下のような治療を行います。
① 急性腎不全の治療
・点滴療法による水分・電解質補正
・原因物質(毒素など)の除去
・利尿剤の使用
・入院管理での集中治療
急性の場合は迅速な治療が命を左右することがあるため、すぐに対応する必要があります。
② 慢性腎不全の治療
・食事療法(腎臓療法食への切り替え)
・皮下点滴による水分補給(自宅でも可能な場合あり)
・降圧剤やリン吸着剤の投与
・吐き気止めや貧血対策の投薬
・定期的な血液・尿検査での経過観察
慢性腎不全は完治することは難しい病気ですが、進行を抑え、生活の質を保つ治療が可能です。
5.当院での治療例
事例:14歳のトイプードル、慢性腎不全と診断
ある日、「最近よく水を飲むようになった」「ごはんを残すことが増えた」との主訴で来院された14歳のトイプードルがいました。
血液検査の結果、BUNとクレアチニン、SDMAの値が基準値を超えており、慢性腎不全と診断。
飼い主様と相談のうえ、
・腎臓サポート食への切り替え
・週2回の皮下点滴
・定期的な血液検査で経過観察
という治療方針で進めました。
初期の段階で発見できたこともあり、治療開始後1ヶ月ほどで食欲と元気が戻り、今も定期通院で安定した生活を送っています。
6.まとめ
犬の腎不全は、初期症状が分かりづらく見逃されやすい病気です。
特に高齢のわんちゃんはリスクが高いため、日頃からの体調管理と、定期的な血液・尿検査が重要です。
もし、「最近よく水を飲む」「元気がない」「食欲が落ちた」など、少しでも気になることがあれば、早めの受診をおすすめします。
森田動物病院では、わんちゃん一頭一頭の状態に合わせた診断と治療を行い、飼い主様とともに最善の方法を考えていきます。
気になる症状がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。